「アカイイト」プレイリポートSuccessの「アカイイト」プレイレポートです(PS2作品)。百合ゲーの雰囲気を漂わせる本作。その点について掘り下げつつレポートしようと思います。内容物一覧 ・パッケージ(DVDトールケース) ・ディスク1枚(ケースは写真撮影用に用意したもの) ・マニュアル ・アンソロジーコミック(内容バレ含む) 以上。 システム メディアはDVD1枚(一層)。 AVGに必要な機能は揃っておりますが、全体的にちょい動作は重め。セーブロード、スキップなどの速度が快適と言うにはもう一歩といったところ。セーブ数が20個なのもちょっと心細い。私のようにエロい吸血シーンの直前でセーブして永久保存なんてアホなことをしていると、すぐに足りなくなるので注意。 褒められる点はシナリオの分岐図(フローチャート)が用意されている点。本作は分岐が多く比較的難度の高いゲームなので、この点は大助かり。これでチャートにイベントのサムネイルでもあれば完璧でしたね。 他、特徴的なシステムとして「血液ゲージ」があります。血液の残量を表すもので、なくなると死亡する…とのことですがなくなることなどまずなく、なくなっても別に死ななかったりするので無視してOK。むしろ血液がなくなるシーンはもれなく美少女のエロいカラミがCG付きで現れるので、積極的に血液は使っていく方向で。 音楽、音声 困ったことに音楽鑑賞モードがないのでBGM数を確認できず。これでどうでもいいBGMばかりなら音楽モードの有無など気にならないのですが、タチの悪いことにBGMがなかなかに聴き応えがあります。 作品の雰囲気に合わせて和楽器、弦、鍵盤、木管を中心に上品にまとめられています。そのため日常シーンではそんなに目立つことはないのですが、敵との戦闘シーンになると上品な雰囲気はそのままにシーンを盛り上げてくれます。 具体的にはラスボス戦専用曲「泡沫」。この曲の完成度は群を抜いています。戦闘シーンの曲と言えば曲調を勇ましくする、テンポを上げる、トランス系の電子音を鳴らすなどとにかくテンションを上げる方向に作られますが、本曲はそうではありません。作風に合ったフルート、PFの上品でどちらかと言うと大人しく切ないメロディを使い、かつ戦闘シーンを盛り上げる曲作りに成功しています。感動しました。ゲーム音楽にちょっとでも興味ある方は必聴。名曲です。 ヴォーカルは最近人気上昇中の「霜月はるか」さん「riya」さん。作風にはピッタリですね。期待を裏切らない完成度です。最近のこのお二方のアニメ、一般&18禁ゲームでの活躍は目覚しく、名曲揃いなのでご存じない方はこの機会に聴いて見ましょう。例えば個人的なお勧めのナンバーとしてはこんなのがあります。 「恋獄」…18禁ゲーム「カルタグラ」OP 「透明シェルター」…アニメ「ローゼンメイデン」ED 「メグメル」…一般PCゲーム「CLANNAD」OP CG 全枚数は119枚。原画はクセのない可愛らしい絵柄もさることながら、衣装がなかなか凝っていて良いですね。和服の柄や着崩し方がいい味出してます。吸血シーンでの色っぽい表情も良い感じです。 キャラ絵以上に特徴的なのが背景。写実的に綺麗に描きこまれているというのもありますが、「月光」」の表現が素晴らしい。淡い月明りに彩られた風景は本作の幻想的な作風をいかんなく発揮しています。余裕があったら良く見てみましょう。 他、吸血シーンの背景はやりすぎだと思います。エロすぎです。 シナリオ 主人公の「桂」が故郷の片田舎で不思議な体験をしながら自らの出生の秘密を探る和風伝奇ストーリーです。看板にはホラーとありますが、血の描写が多少ある程度でちっとも怖くないのでその点は期待してはいけません。また、ラストには怪異とのバトルが必ず挿入されるバトル物と言う側面も持ちます。 内容についてですが、まずキャラの魅力は十分です。主人公の桂はちょっと天然ボケぎみの非力な女性。ボケボケしてて序盤感情移入が難しく感じますが、実は芯が強くやる時はやる子なので案外好印象。終盤で鬼に立ち向かおうとする様はちょっといい感じです。変な萌えキャラで主人公なんて務まるのか、と言う心配はあまり必要ないかな。 他のキャラは皆イヤミのない性格造型が印象的。 ギャルゲーと言えばキャラを立たせるために、気味の悪い語尾をつけたり、知恵遅れのような意味不明言語を発したりしてウザったく感じることがあります。しかし、本作にはそれが皆無。あくまで自然な会話と各キャラの持つ信念で十分にキャラクターを表現しています。奇怪な口癖などの離れ業で無理にキャラ作りをしていない点は好感が持てます。本来のキャラ作りってこうやるものなのだと考えさせられました。 キャラだけでなくストーリー部分に関しても、テキストのレベルは非常に高いです。私がこの場合何をもって「レベルが高い」としているのかは以下のとおり。 1、ウンチクは読みやすく配慮 本作はこの手の伝奇ものの定番とも言える「古事記」上巻より、様々な日本神話をストーリーに組み込んでいます。そのためウンチク量はかなりのものです。 たまに大学生御用達のネタ本丸写しレポートのような、一方的な知識の羅列のみのギャルゲーを見かけて読む気も起きないことがありますが、本作はキャラ会話の随所に小出しに知識を盛り込むことで、あまり「読まされてる」感がなく読み進めることができます。また、必要以上の無駄知識は「用語辞典」に別途記載することで、余計なテキストは読まずに済むように配慮がされています。 2,矛盾、消化不良は一切なし キャラ設定や物語に神話などを盛り込んでボリュームを上げると、どうしても消化不良やシナリオの不整合が出るものですが、本作にはそれがありません。一つ一つの設定は丁寧に消化され、複線はキッチリ回収されエンドを迎えます。当然のことのようですが、これがきちんとできているゲームにはなかなかお目にかかれません。大したものです。 以上が本作のテキストをハイレベルとした根拠です。まとめると、全体的に丁寧にスキなく作られたプロフェッショナルの仕事だと言うことです。下手な色付けをせずにテキストとしての完成度を高める方向で作成されているので、プレイヤーを選びません。名作と呼ばれるゲームのテキストは、ライター独特の強烈なインパクトがある代わりに例外なくプレイヤーを選びますが、本作はその対極です。 このことは、逆に本作が強烈なインパクトを持たないこともまた意味します。クセのない高い完成度を持つゆえに、オリジナリティは低いと言えます。いわゆる「優等生」的なテキストなんですね。ただ、キャラの個性やライター独特の言い回しだけで名作扱いされて売れまくっているギャルゲー市場を見るに、たまにはこう言う作品が出てもいいと思います。 後は「何がなんでも美少女」のギャルゲーと言うことで、敵キャラの鬼すら双子の美少女です。この子たちも攻略できたら良いなぁ…とか思いながら進めていましたが、しっかり攻略できました。いや、ホント隙がないですね。参りました。 以上、ストーリーについては「完成度の高い冷徹なプロの仕事」と言う評価をしておきます。具体的な話は以下の項で述べていきます。 特記事項1 演出について 本作を彩る画面演出もこれまたレベルが高いです。主人公の視線の行き場によって随時カメラが背景にズームするのがいい感じです。戦いのシーンもカメラが右に左にと絶えず動くので躍動感があります。剣を振るえばその太刀筋は動的に描画されます。最近のギャルゲー戦闘シーンは良く動くようになったものです。 テキストは戦う両者の位置、状態を丁寧に描写していて分かりやすいですし、バトルものを名乗ってもおかしくない演出だとおもいます。 特記事項2 キャラ、百合シーンについて(小バレ) さてお待ちかね(?)、表層をなぞるのはここまでにして、ここからは百合シーンについての解説を行います。 本作は主人公が女の子で登場キャラも全てヒロイン…女の子です。そのため多少の百合要素が入ります。しかし、本作で表現されるのはあくまで家族愛、友情、信頼のみ。恋愛ではありませんので、女同士の恋物語を期待してはいけません。 その代わり、妄想を掻き立てられる恋愛スレスレ、倫理規定スレスレのきわどいシーンなら山ほどあります。それらのシーンでは、あれほどあっさりとした癖の無いテキストが、急にネチネチと粘着質になります。以下、紹介していきます。 特に目に留まったのは夢の中で主人公「桂」に語りかけてくる謎の美少女「ユメイ」です。何かにつけて桂を守ってくれる優しいお姉さんです。声は「おっとりした包容力のあるお姉さん」を演じさせたら右に出る者はいない「皆口裕子」さんですので、文句のあろうはずがありません。 …ところが、この清楚なお姉さん本作でははっきり言ってエロスの塊のようなお方です。以下、具体的に見ていきましょう。 前提として、桂は「贄の血」と言う特殊な血統を引く者であり、神でも悪魔でもいわゆる「異形の者」が一度それを口にすれば不老不死の力を得ることができるとまで言われています。さすがに不老不死はありませんが、更なる大きな力を得ることができます。そのため鬼どもが桂の血を狙って群がってくるのです。 「ユメイ」も鬼ではありませんが、不思議な力を操る存在であり、普通の人間ではありません。しかもその力はある事情により不安定で、定期的にどこかからエネルギーを補充しないと姿が消えてしまいます。 最初は自分の運命に恐怖しか感じなかった桂ですが、自分を助けてくれたユメイに、自分の血を飲んで欲しいと決心します。桂の血を啜るなどとんでもないと断るユメイですが、桂の真剣な様子に打たれ、ついに桂の血を飲むことを決心するユメイなのでした。 心臓のどきどきが速くなる。強くなる 桂:「わたし、吸われるんならユメイさんがいい」 ユメイ:「…わかったわ」 どきどきの限界はもっと上だった。うなじにユメイさんの吐息がかかる。暖かい、生きている身体だからこその湿った吐息が、首筋をくすぐった。 (ユメイの唇のアップ。そこから桂のうなじへと舐めるようなカメラワーク。イヤらしいです。) ユメイ:「桂ちゃん…いいのね?」 桂:「うん……」 柔らかい唇と正反対の、硬い歯が私の身体に触れた。さわさわと背中の産毛が立ち上がっていく。 桂:「うっ……」 歯が食い込んでいく。 桂:「んんっ……」 肌を破った―― ユメイ「桂ちゃん――」 桂:「だ、大丈夫。ほんとにだいじょうぶだから…」 ユメイ:「……んっ」 歯形についた傷を、ユメイさんの舌がなぞっていく。赤ちゃんがお乳をねだるみたいに、傷口を吸う。
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